みなさんごきげんよう!
さあ!今年もこの季節が来た。……憂鬱だ。
ここ数年、クリスマス、バレンタイン、ハロウィンに次ぐイベントとなってると言っても過言ではない、アレ。
「衣替え」
何しろ、あの儀式が、あの儀式を越えなければならないのだから………
半年前に泣きながら衣装ボックスに封印したあのズボンが、果たして今年は履けるのか。
毎回毎回この儀式が行われる度に思うんだけどさ、服って縮んでくよねぇ?
おめぇ、省エネとか円安とかに乗っかって、縮んでねぇ?
つって、これは服側の意見。洗えば縮むし、なんなら世相を反映だってしたい。うんうん。偉いなおまえ。見上げた根性してらっしゃる。
で、ここからは僕の身体側の意見。
………うんうん。腹、まだギリでいける。
腹はイケっけど、なんか、ヒザ、とか、ふくらはぎ、とか、、、屈むたびに…鬱血…血流とかに…影響…?
ズボンを履くってイベントはね、やっぱり令和を生きる文明人としてはマストだと思うんだけどね、
こう、何ていうのかな、枷(カセ)感?軽く加圧トレーニングかしら?っていう境地に達してくると、
服を着て外に出かけること自体が面倒くさくなってきちゃうのよね。ね?あるあるだよね〜!
でもまあ、今年はなんとか………ん……??
……………………
な、、なんか、、、
…………股やぶけてませんーーー!?
ゲートウェイ(アーチ)の天井部分に細長い天井窓ができてる……
生地が強いと噂の……デニム生地に………おま…どうやって………?
これ、うっかり地べたにあぐらなんか掻いちゃったら、パンチラしちゃうじゃないのーー!(……ラッキーすけべ!)
あびねぇ……
(ひょっとしたら、デブが予想外の所に影響し始めてる……のかもしれない……)
わかってる。これでもわかってるつもり。
僕だってなにか運動をしなければならないことは。
走る?ねえわ。疲れんじゃん。
筋トレ?無理。すぐ疲れちゃうし。
てかまって、そもそも運動好きじゃなかったわ。
友「FEEL CYCLE通ってみねえ?」
さて、今日のお話は、FEEL CYCLE(フィール・サイクル)という陰キャの法則が通じない亜空間に通ってみた2ヶ月間、必死に自分というものと向き合った、三十路のおじさんのお話です。
……………………
「誰にも迷惑かけてないんだから、放っといて。」
これが、陰側の人が張る結界の正体(たぶん)。
陰側の人達は、その共通認識のもと、それなりに周りを意識しつつ、優しさでお互い気付かないふりをして生きていたりします。
相互交流ゼロの鎖国状態。アクセスしていいのは出島だけ。
そして心の出島は、人によっては長崎にあるとは限らなかったりするのです…!
よし。これで主人公の設定完了。自分で書いてて「こいつクソだりぃ」って思っちゃった。笑
気を取り直してさあ、ピーチ姫を助けに、レッツRPGなのじゃ!
さて僕には、出島の通行を許された大好きな友達が何人かいます。
年末にそのうちの一人と会ったのがこのお話のはじまりです。
うちらも年取ったよねぇとか、学生時代みたいにまた一緒に何かしたいねぇとか、
30代らしく、それはそれは当たり障りのない昔話に夢中になってた矢先でした。
友「あのさ、FEEL CYCLE一緒に通ってみねぇ?」
一瞬、んッッて思ったよ?そりゃ。だって運動だよ?ジムとかそういう系っしょ?陽キャの皆さんが勤しんでらっしゃるという。
さてここで、FEEL CYCLEとは何かっつーと。
FEEL CYCLE(フィール・サイクル)
暗闇で大勢で、爆音で洋楽をかけながら、音楽に合わせてフィットネスバイクを漕いでいろんな運動しましょうっつー、ニュータイプのエクササイズ。
まじか………かなり不安。オブ不安。完全に苦手な予感。
爆音の音楽に合わせて身体を揺らすとか、陽キャにしか許されてねえんじゃねえの?EDMがどうとかって?
僕がいつからそんなド派手な派閥に属してたのかっつー話なんですよ。
と、いうわけで、陰キャなのに一人で陽キャの大海原(暫定)へ漕ぎ出した友達に、とりあえず様子を聞いてみることにしました。
友「ギャルのお姉さん見てるだけで幸せになれるよ。」
ギャルのお姉さん見て幸せな気持ちになったことないんだけど…(ちょっと心配。行きたい度★☆☆)
友「まっくらだから、恥ずかしくない。陰キャ向き!」
それそれそーゆーの!!(ちょっと興味。行きたい度★★☆)
友「トレーナー(♂)の追っかけ(♀)がいると結構コワイ。」
まじか…くそ怖ぇ…((思考停止))
友「………整体いかなくて良くなるよ」
友「キャンペーン期間中だし」
友「毎週うちら会えるのとかサイコーじゃん?」
くそぉ……畳み掛けて来やがって……ちょっと行きたくなってきたじゃねぇか……!!
と、いうわけで2ヶ月、とりあえず体験してみることにしました。本当、とりあえず、だよ!?
……………………
さて初日。その日は朝からずっと緊張していました。
仕事終わりに少し早めに会場に着いて、友達と説明を聞きます。
ルールは簡単。
バイクにまたがり、音楽に合わせて右、左、右、左とペダルを漕ぐ。またそれに合わせて腕立てやらダンベルやら全身運動を行います。
狭ぇ。スタジオ内はミラーボールあり、いろんな色のライトあり。狭ぇ。ここが真っ暗になんのか。てか狭ぇ。
そこに半袖半ズボン、ときに身体のラインまるわかりのレギンス姿のお姉さんなぞが群がり、皆で一方向を向いてバイクを漕ぐ。
ふおおおおおお。。
陽キャにまぎれる未来にちょっとだけ昂揚している自分。なに!未来変わっちゃわない?
時かけのお姉さんも「時間って不可逆なのね」って言ってたよ?大丈夫?逆に後悔しない?
……憧れの…陽キャに…この僕が陽キャに、本当になっちゃうかもよ…!?
…………(スタジオ前の待機スペース)…………
客同士、客だけじゃない、先生(ギャル)も一緒に…めちゃ和気あいあい喋ってる……なにこの陽キャの巣窟……
忘れてました。この居場所のなさ……あと呼吸するの。
そう、僕は陰キャ。与えられた属性は人見知り。得意技は「あいづち」「気のない返事」「愛想笑い」。
もう、何でも良いから、早く始まってくれ……!
いざ始まってみると、もう本当、異空間というか、亜空間でした。ここ本当に21世紀の東京かな?って。
あゆとかが口酸っぱく言ってた「アリーナ〜ッ!」って、二階席まで全員こんな感じなんじゃねえの?
かかってる音楽とかめちゃドゥンドゥン系だし、先生がちょいちょいウルトラマンみたいな「ヘヤッッ!」て掛け声かけてくるの超気になるんですけど、
でもね、体を動かして、汗をかいてみると、
'・*:.。. .。.:*・゜゚・*…なんか…結構. .。.:*・゜゚楽しい…かも……*・゜゚・*:.。..。.:*・
(ものすっっっっっごく疲れたけど!!)
なんか分かんない、けど、
先生(ギャル)……楽しそうだなぁ……楽しそうな女の子、、、観てるだけで……幸せな気分だぁ……
僕「ダンベルで手を振る運動のとこ?こう、笑顔でワントゥワントゥって、なんか、カワイイ……よね……」
友「ね?言ったでしょ?それ、完璧陰キャの楽しみ方。」
は!そういや!言ってた!!!!!
僕、学生時代に運動を毛嫌いして十ン年経つけど、今度こそ仲良くなれるかも!!!
何この予感ー!本当に人生変わっちゃうかもーー!!
その日のうちに2回目の予約をして解散したのでした。
なんつー充実のアフターファイブ!友達とワークアウトっつー、ステキな響き!ステキ30代…!
2回目。
予約が取れず初回とは別の会場で。
客層がイイ!オトナなオジさまオバさまが多いだけでこの安心感。空気感がとってもおしとやか。
なんつーの?陽キャというよりは、ただのガチ勢オジさまズ。この後2コマ連続とか言うてはる。
アレを、2時間……?バケモノかよ。
スタジオは広いし、更衣室も広いし、客層は落ち着いてるし、なんか本格的にハマる予感しかしなかった。あの頃の自分。
と、いうわけで、45分なんとか乗り切って最後の曲。
や、ね、実際、三曲目くらいから、予感はしてました。
ふくらはぎ「やべ」
四曲目くらい、予感は確信に変わっていました。
ふ「ねぇ、攣るよ?殺す気?」
五曲目くらいに、ツルのは水分不足が原因だと思い出しました。
ふ「ちょ、ほんと、ちょ、もう」
六曲目には、全部飲み切って、確信は絶望に変わっていました。
ふ「おいだからさ、つ、つ、」
最後の曲、座って全速力で漕げ、との指令。
ふ「ごめん…もう…つ……つ…」
先生「ヘイ!ライド(煽)!ライド(煽)!もっと!もっとーー!(鼻歌)フンフーン♪」
ふくらはぎ「攣ったーーーー!」
陰キャらしく端っこの席を希望した僕たちは、右サイドの端に陣取っていましたが、
運の悪いことに、そのスタジオの右サイドは1列しかなく、
トレーナー(ギャル)からは、最前列の「やる気のある」生徒さんたちと見なされたようでした。
煽り耐性ゼロ・陰キャの僕は、右ふくらはぎをツらせながら、演技力だけで乗り切りました。全速力で漕いでますっつー演技。
実際、攣ったのがバレて119番入って注目浴びるのも避けたかった。
本当、何らかのアカデミーにノミネートされてもおかしくない絶妙な演技だったと思う。(ドヤ)
(でも完全トラウマ…………)
(誤解を恐れず言うなら、もう、ちょっと辞めたい。)
言いました。友達に。
うん、ずっとは無理だろうなと思ってた、ってケラケラ笑いながら言ってました。このやろう!
でも、辞める前にもう一回だけ、経験で?ちょっとキツめのやつ行ってみようってなりまして。
ヤケクソでした。「ええい、ままよ!」そんな気分で3回目を予約したのです。
3回目。
キツめのやつ。レゲエ回。レゲエですよレゲエ。レゲエといえば7人祭しか知らないんですけど。急にあなた海まで走り出すから、ってやつ。
しかも、その日に限って、友達は遅れて来ました。ギリギリまであの陽キャ空間にひとり。
ああ、人間て孤独な生き物だと思いました。途方に暮れるって、こういうこと?って1人で悟り始めてた。
一曲目から立ち漕ぎ。あ、ヒザ終わるわ。帰りたい。とりあえず曲はやく終われ。
二曲目も立ち漕ぎ。むり。曲はやく終われ。
三曲目立ち漕ぎ。ねえレゲエって一曲こんな長ぇの?コスタ★リカ!フー!的なテンションごめんちょっともうキツイ。曲はやく終われ。
(途中意識あいまい)
先生「さぁ〜早くもあと2曲。気合い入れてヒュイゴー!!!」
は…やく……お…われ……
辞めると決めてからの、このモチベーションの低さね。
なぜかレゲエに対して怒り感じてたかんね。なんで一曲こんな長ぇの?つって。
電池が切れる音がしました。
もはや合う合わないの問題じゃない。ちょっともう、不快(小声)、でした。
もう、絶対辞めてやる、と思いました。
そしてこれは後日談ですが、整体の先生にも、無理な運動は控えてくださいね(ヒザ)、どだい無理だったんですよ、と笑われました。
思い出した。そういや僕、運動好きじゃなかったんだわ。運動の、こういう所が好きじゃないんだった。
そして今度の異動で隣の席に来た50代の同僚おばさん。
おば「ねえ、運動した方がいいよ!FEEL CYCLEどう?オススメだよ?」
ノーーーーーー!!!!
もう2度と行かないって決めてるんで!!!!
2022の僕も頑張った。2023に向けてしばらく運動はお休みします。